仮面ライダー(新) 1・2話感想
『仮面ライダー(新)』の感想。
1話
サブタイトルの文字など、初代をかなり意識した作り。
ハングライダーの練習をしている青年・筑波洋は、暴走族らしき集団に絡まれている車を発見、その車に乗っていた志度博士を助けた。しかし洋の友人たちが、何者かに生き埋めにされて殺されてしまう。
1979年と過渡期の作品だけあって、戦闘員が溶けて消える部分など映像表現の技法などは『ストロンガー』からの進歩が感じられるところ。初代リブートの意識があるためか、全体的に画面が暗くて見づらいところが多いですが(^^;
洋は博士に呼び出され、詫びる博士から影の組織ネオショッカーの話を聞く。ここでさらっと洋は天涯孤独の身であることが示されるなど、情報の示し方に余念はなし。
ルポライター・飛田今太出現などに驚かされる洋たちだが、助手に化けて改造人間ガメレオジンが侵入しており、博士は誘拐されてしまう。それを追いかける洋は重傷を負うが、博士の懇願とネオショッカー幹部ゼネラルモンスターの提案で、ネオショッカーの改造人間とされることに。
改造手術が終わった洋は、目を覚ますと外に出る。そこで戦闘員に襲われ、博士を引き連れたガメレオジンから説明を受けることに。
「今のお前の姿は、本当のお前の姿ではない」
「本当の姿はどうなんだ?」
「俺と御同様の、改造人間だ!」
人間が変身するのではなく、本来が怪人様の姿で人間に変身しているのだ、ということを強調。
戦闘員との戦いの中で変身ポーズの構えを取った洋は、バッタ改造人間の姿に。水面に顔を映して自らの顔を触り、石を握りつぶして確かめるのが好演出。
しかし、志度博士は改造手術に細工をしており、洋は洗脳されていなかった。大首領はそのことを知ると洋がネオショッカーにとっての脅威となることを恐れ、抹殺を指示する。
「話し合いは終わりだ。これからは……」
「これからは?」
「殺し合いだ!」
本作以降、伊上勝はスランプに陥ってしまうという話ですが、こういうセリフの切れ味など見てると、当時まだスタッフから必要とされていたのも納得。
「そんな姿でどう生きてゆく? 死んだ方が身のためだ!」
そして再三、仮面ライダーは異形なのだという事実を叩きつけるガメレオジン。
洋はガメレオジンを倒すが、ガメレオジンはここはネオショッカーの処刑場だと言い残して死亡。山が大爆発を起こすも、ベルト横のスイッチを入れると空を飛べると知った洋は、それで脱出して一人生き延びた博士の下へ行く。
「博士、元気を出してください。私は、少しも博士を恨んだり、憎んだりしません。逆に、今は感謝する気持ちです」
「感謝?」
「ネオショッカーの悪を知った今、それと戦える力を与えてくれたことに、感謝します!」
繰り返された『異形の体』を、戦える力として転換し、前向きに進もうとする洋のキャラクターを、第1話で確立。画面・シナリオ双方が暗い一方で洋の陽性のキャラクターが映えます。
……にしても村上さん、セリフ自体ははっきり聞き取れるけど、棒読みだなあ……(^^;
「筑波君、君こそ……君こそ、仮面ライダーだ!」
で、ここで「仮面ライダー」という固有名詞がいきなり出てくるのですが、「ネオショッカー」という名前からして当初から『ストロンガー』以前と地続き設定で、博士が伝説の戦士である仮面ライダーになぞらえたという話なのでしょうか。リブートでありながら、特に「仮面ライダー」というキーワードに重みがもたらされないまま既成事実とされたことがどうしても引っかかります。
脚本の中では何か由来になる部分があったけどカットされたとかかもしれませんが、ここまで「ネオショッカーの改造人間」と同族扱いの洋を、明確に切り分ける言葉となるものなので、ちょっとそういう要素が欲しかった。
2話
改造手術で新たな改造人間クモンジンが誕生するところからスタートし、クモンジンに高校野球で名の通った男・高森真一を改造人間素体の「スペア人間」として誘拐するよう指令が下される。
一方の洋、前回の場所の周辺を探索してネオショッカーの手がかりを探るのですが、志度博士がハングライダー経験者でクラブを設立しており、そこに所属するヒロインらしき人物二名が突然登場と、劇中でちょこちょこ説明されているものの色々な事実がすでに出来上がっていて困惑。
この時代のことなので何話もかけて作り上げるのは難しかったのでしょうが、にしても博士→会長は、いくらなんでも変わりすぎではあるまいか(^^;
洋たちの帰宅中、その前を通る高山兄弟の車から真一を誘拐に成功したクモンジン。
「お前の運命は俺が握っているのだ」
「殺したければ殺せよ。生きててもたいして面白いこともなさそうだしよ」
「まだ若いくせにそういう考え方は良くない」
なんで妙に道徳的なんだ、クモンジン(笑)
運転手不在自動車を洋が止め、弟・健二の兄が突然消えたという証言からネオショッカーの仕業でないかと疑い調査に。その過程でクモンジン、洋に襲い掛かるが洋はライダーに変身。
「待て待て、よく見ろ! あれが人間か?! 俺たちの仲間だ!」
改造されたばかりのクモンジンはライダーの詳細を知らないために、仮面ライダーを味方の改造人間だと誤認して友好的に接してくるという、前回に引き続き仮面ライダーの「異形」を強調。
うまくクモンジンをだましたライダーは、真一を救出……背景にいる他の人はガンスルー。
目的は真一だけというの、潔いけどいいのかそれで(^^;
助けられた真一だが、大学受験に失敗したことを発端にひねくれているという話で、ライダーにも弟にも素直に接しようとしない。いったん帰宅した洋だが、自宅で襲い掛かるクモンジン!
捕まった洋について、ゼネラルモンスターが現れてその処遇を決めることになり、クモンジンは真一誘拐に向けて再度動く。
そしてゼネラルモンスターの口から、ネオショッカーの目的は人口爆発に伴う食糧難および人類滅亡を回避するために、人口を3分の1に減らして改造人間による統治を行う世界とするのだと目的説明。早い段階でネオショッカーの目的が明確化され、その内容にもリアリティを持たせる理由づけがなされているのが面白いところ。
前回の「そんな姿でどう生きてゆく?」や今回の「まだ若いくせにそういう考え方は良くない」など、ネオショッカーは悪党ではあるもののどこか「人間の生き方」について妙に常識的な言及をするのが気になりますが、年代の移り変わりに合わせて悪のサイドの描き方も変化球を加えてきたというところでしょうか。
洋は拒絶するが、ゼネラルモンスターにビルの屋上から転落させられる……も、変身してセイリングジャンプ!
「驚くべき仮面ライダー……空を飛べるとは!」
知らなかった?!
前回の志度博士の反応見るに、改造した博士自身も理解していない隠し機能というか突然変異の超能力の可能性もありますが。
高山家に飛んで向かったライダーだが、健二は誘拐されており、クモンジンは真一をおびき寄せようとする。健二は君を尊敬しているんだと説得するライダーだが、真一はこれまでの努力が無駄に終わった大学受験などから人生に絶望しており、健二から尊敬されるような人間ではないと突っぱねる。しかし時間は刻一刻と迫る。
「真一君、君も人生に命をかけてくれ!」
「命を……」
「私も命がけで生きていく!」
格好いいライダーの励ましなのですが、実質健二のために捕まってくれというも同然だし、健二を救い出す策そのものは全く考えてないしで、どうにもお話が据わってない(^^; 真一は野球は得意でも、一般人であって戦闘能力は皆無なのですが。
真一を連れて約束の工場にたどり着いたライダーは、健二を助けるも真一を連れ去られそうになる。しかしクモンジンを追いかけ、蜘蛛の巣攻撃を返してスカイキックで倒した。兄弟は和解し、真一は再起を決意する、と決着。
設定の説明を入れつつドラマを組み込もうとしているのですが、肝心のドラマ部分が真一を誘拐するのが目的のクモンジンに対してライダーの対応が意味不明なこと、そもそも今回は真一個人の心の問題であって真一と健二の兄弟の間の話ではないのに何故か話の軸がそこにシフトしてしまうことなど、首をかしげるような内容。
2話続けて暗い画面にシリアスな作風で通されるのですが、話に積極的に絡むわけでもなければギャグとしてもいまいち微妙な飛田が、ちょっと厄介な存在(^^;