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ぼんやりと特撮・アニメなど

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小説『スマイルプリキュア!』感想

小説感想 スマイルプリキュア! 金元寿子

小説『スマイルプリキュア!』(著:小林雄次)の感想。

※ネタバレ注意!

 

小説 スマイルプリキュア! (講談社キャラクター文庫)

小説 スマイルプリキュア! (講談社キャラクター文庫)

 

 

 本編の10年後、プリキュアたちはそれぞれの道を歩んでいたが、それぞれが異なる壁にぶち当たり、未来について悩むことになる。そんな中で他のプリキュアと再会するが、誰もがプリキュアはみゆきの描いた絵本の話だとしか覚えておらず、そればかりか何故かプリキュアと共に過ごした日常の記憶さえも思い出せない。その違和感を覚えながらも、旧友との再会で未来の道を切り開けた各人はキャンディの声を聞き、ふしぎ図書館への扉を再び開く――

 という展開をプリキュアそれぞれに行うオムニバス形式から、最終章で真実を明かして決戦へ、という内容。

 10年後のキャラクターを描写するにあたり、14歳から内面がまるっきり変化していないのはおかしいので、相応に変化したところをその過程まで各人の回想により用意しつつ、かといってきちんとキャラクターのイメージを崩さないように、とかなり面倒くさい設定。

 実際のところ「ちょっと泣き虫だけど決めたことは最後までやり遂げるのが私のポリシー」とモノローグで語っちゃうやよいとか、ちょっとどうなのかと思うシーンもいくつかあったのですが、最終章で明かされる真実で内面が一部変化してないことにも一応説明がついてしまうことになっており、すごい力技。

 各キャラごとで言うと、みゆき(ハッピー)・あかね(サニー)・なお(マーチ)については本編の設定や描写の中でも特別インパクトが強い回を拾った上でなぞる感じで進んで、あんまり面白く感じなかったのですが、やよい(ピース)はやたら力が入っているように見えて面白いのは、気のせいなのでしょうか(笑)

 やよいの基本設定と本編中の描写を踏まえた上で、人気漫画家になるという夢を叶えつつもそれゆえに生まれた苦悩と、今に一区切りつけて新しい目標を探そうとする姿など、なんだか、作者の小林雄次さんが実体験をもとにちょっと入れ込んでしまったのではないかと思ってしまうぐらいにきっちり作られているように感じるのですが。あくまで作品と作者は別だ、とは承知の上で。

 やよいの章だけ、旧友(なお)との再会のきっかけがなお側の事情と設定をきっちり汲んだうえでやよいメインのエピソードで提示された「名前」テーマを組み込む、とやたらに複雑に作られてたりしますし。

 小林さんがキュアピース初登場(3話)とミラクルピース誕生&最後のやよいメイン回(41話)の脚本担当していたので、その分の思い入れが強かったのかもしれませんが。

 逆に本編の描写の拾い方で引っかかったのはれいか(ビューティ)で、彼女にだけジョーカーが実際に現れてしまうのは、ちょっとどうなのかと。

 最後の因縁の相手はジョーカーであり、ジョーカー側からも一番のブレーンとして警戒していたのはビューティ、という本編の描写は踏まえていますが、話の設定と構造を踏まえた上でジョーカーがれいか「だけ」を特別に狙ってきてしまうのは、バランスが悪かったように感じます。

 本編でもビューティが特別ジョーカーをライバル視(あるいはその逆)というのではないので、この二人の因縁がそんな特別強いと感じられないわけでして。

 この後の展開を見るに、ジョーカーは最後の一人だからなりふり構ってはいられなくなった、という感じでもなくて、ここはもう最後のれいかメイン回(43話)を拾っただけ、みたいな(^^;

 この『スマイルプリキュア!』の設定を拾おうとする姿勢、原作を大事にしようという意気込みは確かに伝わるのですが、話の流れを遮ってまで本編エピソードの内容や設定を拾っている部分がやたらに多く、その点が本作の大きな問題点。

 作品の設定などからしても、本作は「原作の『スマイルプリキュア!』を全部視聴し、愛着を持つファン」をメイン対象としているものであるのは明らかなので、説明されなくてもそういうエピソードがあるということは基本的に知っており、むしろ作り手がひけらかしている・押し付けているような感じにさえ見えて、いい印象には映りません(^^;

 必ずしもそういうファンだけが取る本ではないのですが(他の作品のファンだけど『スマイル』は未視聴、って人もいるかも)、過去エピソードの回想があまりにも説明的過ぎるので、本編未視聴の人がこれを読んで本編のそういうエピソードを見たくなるのかなあ、と疑問に思ったり。

 まあそこで「詳しくは本編見てね!」って連呼されるのも嫌ですが、流石に「ジョーカーがゲームを持ちかける」って流れで「夏休みにマジョリーナの道具でゲームをさせられた」って回想につなげるのは無理がありますし、話の流れも切られてしまうし、いくつかはあきらめて削った方がよかったのでは。

 そういうわけで勢い任せの雑さを感じるところが多々あるのですが、『スマイル』の続編・完結編として作品テーマをきちんと踏まえつつ、未来の決着をつけた作品として、結構楽しめた本でした。まあなんだかんだ、個別のキャラが好きなので、その勢いで見れば大体のものは楽しめそうなのですが(笑)

 で、ここから最終盤のネタバレ含む世迷言。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ジョーカー復活の設定と、彼に対する決着はGo!プリンセスプリキュア』の最終章の影響があるのかなーと。

 本作におけるジョーカー、ピエーロに融合していたためにその集めたバッドエナジーを一身に受けてプリキュア達に復讐するための不死の存在となったというモロに『プリンセスプリキュア』最終回のクローズと同様の設定でして、さらに決着までジョーカーが未来を閉ざしたためにプリキュアが未来を乗り越える体験を得て、そのことをプリキュア達は感謝してジョーカーを飲み込んでしまう、というものなのも重なっています。

 ただプリンセスプリキュア』では過去を越えたことを思い出すことで、これまでもこれからも絶望の存在を肯定して、いつまでも強く優しく美しくあろう、と願う着地でしたが、本作の場合は閉ざされた未来を越えてきたみゆきたちが、未来で崩れそうになっても立ち直れるための過去になるというところに落とし込んでいて、同様の展開でも違うテーマ性を見せてきたのは作家の意地を見るところか。

 本作ではジョーカーへ直接「ありがとう」という感謝の言葉を述べるのですが(『プリンセスプリキュア』では「絶望が自分を育てた」ことは肯定しても、クローズへの直接的な感謝の言葉はなし)、過去からの言葉だけでなく未来の自分たちまで乗せることで、そこまで突っ込んでいく力を持たせているのも秀逸。

 発売前から示された設定である「10年後のプリキュア」というのも、『プリンセスプリキュア』が最終回で成長したはるかたちを描写したことを踏まえて、同様のテーマを抱える先駆者の本作が斬り込んできたのではないかと思っていたのですが、上手く差別化を図りつつ、「未来を描きながら自分たちが未来のための礎となっている」という不思議な構図が『プリンセスプリキュア』との関係で妙に綺麗に収まってしまっているようにも見えて、ちょっと感動(笑)

 『Go!プリンセスプリキュア』は『スマイル』のテーマを物語としてより洗練した作品、というのは私の個人的な考察(ほぼ妄想)ですが、本作は『スマイル』だけじゃなくて『プリンセスプリキュア』も知っておいた方が楽しめるかもしれません、というのは一つ書いておきたいと思います。