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鉄血のオルフェンズ 27話感想

機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』の感想。

 活動家アリウムの依頼でクーデリアを狙う宇宙海賊「夜明けの地平線団」。その戦闘に降りてきた三日月の乗るガンダムバルバトスルプスは、次々とモビルスーツを撃破していくが、大気圏突入の無理がたたったのか、不具合を起こして止まってしまい撤退する海賊を追撃できず。

 1期の1話と2話に重ねたのでしょうが、主人公機がこんなあっさりエンストする開幕……(^^;

 夜明けの地平線団の戦力は艦艇10隻にモビルスーツ多数とあまりにも大きいが、対抗できなければ終了なのでいずれ来る正面衝突に、対策を打ち始める鉄華団

 新メンバーが戦場での死を経験し、それを諭す昭弘、撃墜マークを付けようと調子に乗ってタービンズのお姉さん方に叱られるダンテなど、鉄華団を描く話に。

 三日月とクーデリアが再会したところにアトラも合流して、クーデリアにブレスレットを渡すのですが、「お揃い」と言う割にクーデリアだけ真っ白なのが気になるところ。

 で、三日月は臭いが気になってきたとアトラに告げるのですが、

 「これ三日月の匂いだよ。血みたいな匂い

 本作の「血」は絆の象徴であるのですが(鉄華団の理念にも「死んでいった仲間たちの血で固まった絆」というものがある)、同時に死や戦闘のニュアンスも入っているのは言うまでもないところで、三日月はそれを拒絶しているがアトラは何とも思っていないというのがポイント。

 1期で三日月は自分の体臭に気づいていないという話が持ち出されましたが、三日月が嫌っている臭いに魚の料理の臭いがあり、この辺どうも三日月は殺されないために生き物を殺すのは平気だけど、生きるために動物の死骸を食うのはできないというズレが生じています(この後食事のシーンで、三日月は本物の肉を食べないことが明言されている)。

 本作で実は一番「死」に向き合っていないのは三日月で、逆に一番真剣に受け止めているのはアトラだと思うのですが、1期でアトラは三日月や雪之丞の体臭を嫌っていたにも拘らず今回は平然と受け入れており、逆に三日月は自分の臭いが気になり始めたあたりに、二人の精神面と周囲の環境の変化が見えてきています。

 死生観が劇的に変化したわけではないのでしょうが、あるいは三日月から死臭が漂い始めた(それに三日月は直面して迷い、アトラは既に通り過ぎた道なので平然としている)、という話なのかも。

 その後、地球支部で会計係を説得しているチャドや、アーブラウ正規兵と衝突するアストンをなだめて食事をおごるタカキなどの地球側へ。

 妹の手料理を出した後、コップを出すときに「赤いのでいい?」「お客様用ので」という会話があったり、食べているスープと重なる形で火星の鉄華団料理(アトラ特製本物鶏肉入りトマトスープ)に移るあたり、アストンの鉄華団での微妙な立ち位置を示しているように見えて、意味深。

 舞台は再び火星へ。食事の中、新人団員ハッシュは雪之丞にモビルスーツパイロットとして志願し、必要なら阿頼耶識手術も受けるというが、年齢からナノマシンが定着しないと拒否する雪之丞。

 雪之丞のおやっさんは俯いての発言をしているので、彼個人として阿頼耶識の手術に思うところがあると思われますが(雪之丞も義足ゆえに差別を受けてきた経験があることを示唆している)、ここで彼のキャラクターを示す重要なポイントはそういう個人的な意見ではなく客観的な意見から拒否しているということ。

 1期から引き続き出演の貴重な「大人」の鉄華団メンバーであるおやっさんですが、そこで彼は子供たちにこうあるべきだという指針を示したり指導者となることはなく、あくまで団員の意思決定は本人に任せて自分はそのサポート役に徹する、というのが貫かれています。

 意地の悪い言い方をすれば自由意志という言葉を盾に危険な目に遭っている子供たちを放置していると解釈できる話で、故に理想的な大人と断言できる人ではないのですが、世の中の大人が全て子供たちに何かを教える指導者になるわけではないし、そうでない大人がいてもいいだろう、というところできちんと一貫しているのでキャラとして魅力的に仕上がっている、というのが上手いところ。

 「駄目だよ! 阿頼耶識の手術ってとても危険なんだよ?! 下手したら死んじゃうんだから!」

 ……まあ、そんなことお構いなしに善意のド直球をぶち込むのがアトラなんですが(笑)

 あんたに何が分かる、とアトラを払いのけようとしたハッシュだが、やってきた三日月に腕をつかまれる。

 「何これ? これは、何?」

 ほぼ半身動いてない自分より小柄の男に、片腕だけでへし折られそうになるハッシュ(^^;

 アトラのピンチ→三日月登場で解決、がなんだか板についてきて、スタンドとか召喚獣って単語が頭をよぎるのですが、多分一番的確な関係は一ノ瀬晴と東兎角(笑)

 (※いい加減、『悪魔のリドル』から離れろ)

 「何で……何であんたは良くって、あいつは……」

 ただおしゃべりしてただけで何でもない、とごまかすアトラに、言葉を失い謝るハッシュ。

 アトラの対応は一見「自分が我慢すればそれで済む」という大人の対応ですが、裏返せば「私は被害者だけど何とも思ってないから問題ない」と言っているようなもの(アトラの場合、そういう悪意は確実に持ち合わせていないというのがタチ悪いけど)で、そう言われたハッシュからして見ればそこで変に意地張っても話が進まないから適当にごまかしてしまうしかないわけで、この後デインにだけ語っている過去のことは三日月とアトラには一切伝わらないまま話が流れてしまいます。

 この後にどれだけ影響してくるかわかりませんが、無理に阿頼耶識モビルスーツにこだわるハッシュの真意が三日月たちに知られなかったのはここでアトラが話を誤魔化してしまったからなわけでして、逆にアトラが変に子供っぽく意地を張ってハッシュを糾弾していたなら、この場でハッシュの心中が大勢に知れ渡ることになり、その後の三日月たちとの関係も変化した可能性があるわけです。

 ハッシュは見た感じ「過去のあることから高い理想を持つけど、世間や周囲に目を配っていない視野の狭い少年」のイメージで展開されていますが(キャラクターデザイン的にも瞳の大きい三日月に対して細長く小さい瞳で対にされている)、その視野を狭めてしまっている原因にアトラの対応があるのは否めないと思います。

 全て結果論ではありますが、タチが悪いのは何かと言うとこの辺のアトラには本当に全く悪意が無いということで、アトラは善良な人間ではありますが、これは確実に人を殺すタイプの善良さだというのが見えているのがすごく怖い(笑)

 そして、何が原因かわからないけどとりあえず謝っとくのが無難だろうといい加減な気持ち(以前、食事中に心配するアトラが面倒くさいのでブレスレットの話題で誤魔化したのと全く同じ(^^;)で「なんかごめんな」と言いだす三日月に、ズタズタに追い打ちをかけられて去っていくハッシュ。

 ……強く生きろ。

 一人黄昏るハッシュに寄ってきたデイン、二人だけで過去の回想。

 スラム街で暮らしていたハッシュは兄貴分であるビルスがCGSに少年兵として雇われた結果、阿頼耶識の手術失敗で半身不随になって帰ってきたこと、そのまま何の保障もされず、ついに自殺したこと、その経験から自分が新たにビルスのような人間になることを理想としていると説明。

 露骨にオルガ(ビルス)と三日月(ハッシュ)のアンチテーゼとなっているのですが、過去の三日月とハッシュが違うのは、三日月は「オルガが連れていってくれる未来のために、自分ができる限りの力を尽くす」けれどハッシュは「ビルスに頼りさえすれば自分たちは問答無用で幸福になれると信じている」というところ。

 三日月は「リーダーは目標への道を照らすだけで動くのは自分の意志」なのに対して、ハッシュは「リーダーは目標まで自分たちを送り届けることまでするもの」と認識しており、この点で明確にズレています。

 そして、三日月とビルスの関係(三日月は三度の手術を成功して一級の兵士、ビルスは一度で失敗して産廃に)をハッシュはどう捉えているのかというと、「三日月は選ばれた幸福な適合者で、ビルスは選ばれなかった不幸な不適合者」という考えが透けて見えています。

 その考えを前提に置いたうえで、阿頼耶識による後遺症や弊害をビルスのことで理解していながらなおも受けようとするハッシュの姿は、どうも「自分が指導者になれる存在(選ばれた者)なら失敗するはずがない」あるいは「失敗しても自分はビルスじゃないから死にはしない」という意識も入っているように感じられ、一見ビルスを兄貴分として慕っているように見せながら実は「ビルスは所詮、選ばれなかった産廃」だと心のどこかで軽蔑しているのではないか。

 次のビルスになると言いながら、目標が「三日月・オーガスビルスが越えられなかった壁)を超える」ことであるのも、そこを裏付けしているように見えます。

 暗に「ビルスを否定し越えていく」ことを目標に掲げているわけですが、現状のハッシュは「指導者として連れていくべき場所」がどこかは理解していませんし(これはオルガもそうですが)、ビルスと会話しているシーンに自分以外の少年が出てこない(=誰を連れていこうとしているのか不明)というあたり、確実に破綻する要素だろうという気はします。

 また、ハッシュの態度からして「三日月は選ばれた非の打ちどころのない幸福な人間」という認識をしているようにも感じられますが、実際のところバルバトスにつながらなければ三日月は右腕と右目が動かないというハンデキャップが既にあり(そのことも含めて、ビルスと違って生き続けている三日月を産廃呼ばわりして軽蔑もしているわけですが)、断じて全てが幸運に恵まれた人間ではないというのは見てわかるのにもかかわらず、そこに気づいていないのはキャラクターに課せられた物語上の課題と思われ、どう転がるか見ものです。

 マクギリスから石動率いる部隊を協力に出されたことで鉄華団は本格的に動き出し、一方ラスタル率いるギャラルホルンの月外縁軌道統制統合艦隊はマクギリスの動きに応じて、イオクとジュリエッタが行動開始。ラスタルは仮面をかぶった謎の男と合流し、マクギリスの動きがその男の予想通りだという話が出て、次回に続く。

 仮面はまあ、正体予想はできますが、本作の世界観的にどう転がせても不思議ではないので保留ということで。