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『かぐや姫の物語』感想

金曜ロードショー』にて『かぐや姫の物語』を見たので、ざっくりと感想。

 原典『竹取物語』が有名なので、結末が破滅・破綻であることは既に予想できている内容なのですが、それを念頭に置いたうえでその原因がそれぞれの価値観(だけ)から見た正しさの衝突によるもの、という内容の話。

 予定されたゴールに向かっていくための説得力を肉付けしていく形で、話や感情の流れが分かりやすいのですが、結末が結末だけにこれを楽しむのは悪い感情のような気がして、妙な気分になります(^^;

 翁の態度から名付け直後の貴族の反応、貴族や御門からのかぐや姫への求婚まで、全編通して「価値観の押し付けによる人生の強要=悪」という雰囲気が滲み出ている(この表現で正しいのかはわからないけど便宜上こう表記します)のですが、自分としては一番タチ悪い人間は翁でも御門でも相模でも捨丸でもなくて嫗(かか様)なのではないかと。

 見落としがなければ、嫗はラストシーンの「行かないでおくれ」と「連れていっておくれ」以外、姫に「~してはいけない」とも「~しろ」とも「~するべき」とも言う場面がない。

 先に上げたように「価値観の押し付けによる人生の強要=悪」であるならば、嫗はそれと正反対の位置にいるわけで、故に他の人物に比べて善良な印象に見えてきます。

 が、実際この人、かぐや姫に干渉しないために危険なことを教えることさえ一切やっていない

 捨丸たちと遊ぶことへの心配をしないのは、近所の付き合いから理解できる範疇としても、赤ん坊の姫が刃物に手を伸ばした時にそれを止めたのは翁だし、嫗は基本的に見ているだけ。

 かぐや姫が物事を決断するときに影響している他者の意志という面で見ても、嫗はさっぱり見当たらない一方で「翁のため」は度々あるわけで。

 それでいてこの人、かぐや姫を拾ったときに翁に対して「育てるのは私」とか言いだしたり、赤ん坊の姫に乳を飲ませたりと「女(母親)の役割」をちらつかせたりするので引っかかるという(^^;

 劇中、かぐや姫が悩んでいるときにそれを正面から話すことができたのは嫗なのですが、それができる相手なのは嫗が都に上がっても自ら家事をやってたりして当時の一番の幸福とされる価値観から外れた人となっているからなのでしょうけど、一方でそういう男女の役割とか父性・母性とかに対する意識は割と当時のそのままを持ち出そうとしていて、裏返せばこの話で一番のワガママはこの人だったんじゃないかなーって。

 翁や御門は積極的に幸福に対する意識を押し出すから残酷なのですが、嫗は自分を押し付けない故に見えない形で残酷、というか。

 捨丸については、「当時の幸福とされる世界」(本人もそう考えている)に届かない人間でありながら、それとは違う「かぐや姫が願う幸福」に気づかせる役割を担っていて、本作テーマの重要人物のはずなのですが、長く働き続けて妻と子供を抱えていながら帰ってきた幼馴染に求められると即決で放りだそうとしてしまうあたり、これはこれで相当ダメな人じゃないのだろうか(^^; 最終的にかぐや姫との最後の邂逅を夢と割り切って、今いる家族に戻っていったのですが。

 子供のころの捨丸がかぐや姫を異性としてどれほど意識していたのかがすごく微妙なラインのため、年代飛び飛びでかぐや姫に対する心の距離が急激に変化しているのには少々乗れませんでした。

 ラストシーン、月の社会が現代の感覚では露骨にディストピアなわけで、本作かぐや姫は自己の確立と他者の存在について当時よりもかけ離れた意識と価値観を有していてそのことを述べようとするものの、有無を言わさず衣を着せて記憶を奪う天人、怖い。

 原典では御門に不死の薬を渡すものの、御門はそれを山で燃やしそれが富士山となった、という結末があるのですが、本作ではカット。尺の問題なのか、描きたいものと外れるからなのか、それとも他に理由があるのか。

 天人の描写がいかにも仏様で、月の人間と言うより完全に現世とは別次元=あの世の人間という印象が強く、かぐや姫の月への帰還や穢れと苦しみが取り払われるという話、有無を言わさず衣を着せるなどの描写もむしろ「死」を想わせる印象があり、この話ではそもそも不死などあり得ないという設定なのかもしれません。

 おかげで御門がただの気持ち悪いセクハラ野郎(顎がすごい)で終わってしまって、いいとこなしでしたが!

 御門のデザイン注文「美形だけど少し崩してほしい、例えば顎とか」というのはすごくよくわかるのですが、もう少し見せ場はあってもいいのではないか(笑)

 演技面ではジブリ恒例で専業声優でなく俳優や芸能人起用でしたが、そこまで違和感が強くなかったのは絵柄の都合でしょうか(一部音声収録はプレスコだったのもあるかも)。相模だけやけに演技が上手いと思って調べたら高畑淳子さんで、納得。

 現代の解釈で描いた『竹取物語』という題材ですが、安直なパロディではなくて、楽しめました。