『Go!プリンセスプリキュア』の感想。
人相描き(おそらくはるかやトワの証言をもとにゆいが描いたもの)を持ってカナタ王子を探す一行だが、その途中でバイオリン職人の錦戸と遭遇。以前、絶望の檻に閉じ込めたことからトワが謝罪するがトワイライトと同一人物だと気づかれずという話を適当に流し、その絵と似た青年を知っていると述べる錦戸。
二週間ほど前に浜辺に流れ着いた彼を助けたが、記憶を失っているという。バイオリンに興味があるらしいものの、やはり記憶は戻らないそうで、しかし持ち物からカナタに違いないとシャムールたちが補強。
上半身裸(+包帯)でバイオリンを弾く青年が映される女児向けアニメ
ていうか結構筋肉あるな、王子(笑)
なんとか記憶を取り戻させようと色々思い当たることを述べるプリキュア達。
ここで判明するトワのフルネーム「プリンセス・ホープ・ディライト・トワ」。
話にはあまり関わらない設定なのでさらっと流されますが、苗字は「ホープ」でいいのか、王家。
プリキュアに変身すれば思い出せるかも、とキュアフローラに変身するはるかだが、王子の
「きれいだ」
の、一言で撃沈。
王子、記憶失ってもそのスキルは維持している模様。
一応、秘密のはずのプリキュアへの変身をそんなことに使っていいのかと思うのですが(幸い錦戸さんいませんでしたが、そもそも「プリキュアの力はゼツボーグ以外使っちゃダメ」と書いたのは今回脚本の香村さん)、それはさておきプリンセスパレスを出して「これが実家だ」と説明する展開はさすがにやりすぎな気がします(^^;
きららがきちんと突っ込みますし、素直に受け入れている王子も王子ですが!
今度はかつてトワがバイオリンで記憶を取り戻したように、自分もバイオリンを奏でて思い出させようとするトワだが、やはり思い出せず。他に手がかりになりそうなものはこの世界にはなく、もはや打つ手なしと思われたその時、ひらめくはるか。
はるかの言う手がかりは、かつてカナタとはるかが出会ったあの野原。ここでならきっと思い出せるかと思われたが……やはり何も思い出せないカナタ。
「そっか……そうだよね。トワちゃんのバイオリンでもダメなんだもんね。ごめんね、こんな遠くまで連れてきちゃって……」
涙を流すはるかはみなみときららに励まされ涙をふくが、うつむいたままのトワは野原で子供たちと遊び始めるカナタたちから離れて、一人涙を流す。
「どうして……どうしてこんな……やっとお兄様に、「ごめんなさい」と「ありがとう」を言えると思ったのに……」
必ずお兄様を取り戻してみせると意気込むトワだが……
「うん、でも……もしかして私たち、カナタを苦しめてないかな?」
「え?」
「だってね、私たちが色々教えようとするたびに、カナタがつらそうな顔するの」
前回、予告の時点で「カナタの失われた記憶を取り戻す」という展開が見えてから、はるかやトワがそこに走ろうとするあまり「カナタを元に戻す」のではなく「自分たちの理想のカナタ(お兄様)」を押し付けるような展開になってしまうのではないか、と危惧していたのですが(それをやるとここまで示されてきた作品テーマ全体に関わるので)、はるかがここで自分からブレーキをかけてきました。
基本、善行についてこれと思ったら一直線で、視野が狭くなってそれはどうなんだ……と思うような言動を見せることも多いはるかが、自分から立ち止まってきたのは珍しい。
そこに現れたフリーズとストップ、少女の一人をゼツボーグに。その少女の夢は「プリンセス」!
指輪付きの拳に対して「指輪でパンチなんて品がない」ってツッコミは、脚本家つながりで『仮面ライダーウィザード』のネタか(笑)
髪の毛を自在に操るゼツボーグに投げ飛ばされるプリキュアだが、独り立ち向かうフローラ。
「カナタ! 私もここで守ってもらった! カナタに「夢」を支えてもらった! カナタ、あなたがいたから私はプリンセスを目指せる! あの子の夢も守れる! ありがとう、カナタ。あなたがいてくれてよかった」
かつて、カナタに自分の持つ夢を肯定されたことがきっかけで、どれだけ傷つき落ち込んでも夢を信じ続けているはるかの想いが、強く示される台詞。
「夢を守るヒーロー」であるキュアフローラの夢を守ったのがカナタ王子という図が押し出され、王子の「王子」っぷりがさらに加速(笑)
カナタもまたはるかが夢を信じるからこそ絶望せずに戦い続けており、今キュアフローラはそれを守ろうとしているという、ヒーローが互いを支え補っているという構図に。
プリキュアはゼツボーグを撃破。少女を助けたあとも記憶を取り戻せないカナタだが……
「いいよ。今は、思い出さなくても」
「で、でも……」
「はるか! 何を言い出すの?!」
「ごめんね。トワちゃんには、辛い思いをさせちゃうかもしれないけど……でも、何も覚えてなくても、カナタはカナタだもん。まずは、今の私たちを見てもらおう。少しずつ仲良くなって、そしたら、いつかきっと……たぶん、ね」
強烈過ぎる一撃を叩き込んでくるはるか。
『プリンセスプリキュア』がこれまで示してきたのは「個人の夢と命を尊重すること」であり、だからカナタが苦しんでまで記憶を取り戻すということは無理強いできないし、記憶を失っていようと「カナタ」であると見てまずはその生存を肯定していくのが、ここではるかが示したこと。
一方のトワからして見れば、王国とカナタを救い出すためにというのが戦いの主たる理由であり、そこで救う対象のカナタは自分の夢にも関わる「記憶を持ったカナタ」で、極端な話「記憶を持っていないカナタは「お兄様」ではない」という意識。
記憶を失う前のカナタの「夢」はトワとバイオリンを奏でることなのでトワのことを思い出さなければ失われますし、帰る場所とか考えると記憶を取り戻した方がメリットは大きいと思われるのですが、現状カナタが苦しんでいる以上はそれは単純な善良ではなく、そこに推し進めるのは当然はるかたちであってはならないわけで、トワは一見カナタの理想を考えているように見えてそこにエゴが混ざってしまっていた、という状況。
肉親である以上、トワのカナタへの想いとカナタの状況への苦しみははるかより重いと考えられるわけですが、トワもまたプリンセスプリキュアとして戦い、プリンセスを目指す以上はそのポイントについて線を引かなければならない、とトワもそれはわかっているだろう(加えて今回、ゲストの夢も「プリンセス」であったために、はるかもトワもそこは確実に意識していると思われる)から、ここではるかに対して何も言えません。
まして、トワ自身がキュアフローラの「まずはここから出よう」と「一歩ずつ取り戻していけばいい」によって救われているため、同じことをはるかがカナタに適用するのは当然否定しようがない、というえげつない話に。
誰だよ、こんな意地の悪い脚本書いたのは?!(涙)
前回いまいちパッとしなかった香村純子さんですが、やっぱり恐ろしい人です。
「そう、ですわね……ただ、ただ! せめて、せめてお兄様と呼び続けてもいいですか?!」
「……ああ、いいよ。トワ」
このまま終わるとトワに対して全く救いがなくなるところでしたが、トワがここでカナタの生存と記憶喪失に対して素直に受け入れ、理想を無理に見出しはしないけど、でも「私のお兄様」であってもらいたいとカナタに乞い、それをカナタも受け入れてくれることでバランスを取りました。
「じゃあ、改めて……私たち、今日からお友達ね」
「うん、ありがとう、はるか」
かつて出会ったときの二人と、握手をする現代の二人が重なる図。OPでも度々強調された向かい合う二人の構図ですが、かつては夢を信じてくれたカナタにはるかが救われたのが、今度は存在をはるかに肯定されることで救われるカナタという逆の姿になっているのが面白いところ。
前回の予告時点では、ここまでの作品テーマに対して噛み合ってくれるのかなと心配でしたが、ここまでのキャラ描写の積み重ねの丁寧さを生かした上で強烈な一撃で吹き飛ばしていきました(笑)
凄かった。
次回、またも海藤家の海へ。……今度こそ、きちんとフォローされることを期待したい。