出撃したマクギリスはガランと対決。率いているMS隊が阿頼耶識特有の機動を行うことから鉄華団兵士と気づき、オルガの命で動いているのかと説得を行うが、アストンとタカキは聞く耳を持たず。そして戦争を終結させたいと願うタカキは、アストンの言葉に耳を貸さず先行し、マクギリス機に捕まってしまう。
「命がけだよ、私もな!」
珍しく、というかもしかしたら初めてかもしれないマクギリスの冷汗。
正直、1期の引きから考えるとマクギリスはまだあまり弱体化してほしくないのですが、まあこれから先に待ち受けるのが全部マクギリス以下でも茶番臭くなって仕方がないので、どこかでこういう弱みとかを小出しにしていかなければならないのはやむを得ないか。
対抗する相手が新MSに乗った鉄華団メンバーということで、一応本気を出せない&戦力で迫られている理由づけにはなってますが。
マクギリスはタカキからトマホークを奪い取って攻撃するが、アストンが割り込んで阻止。さらにアストンが組み付いてマクギリス機を拘束、焦るマクギリスにガラン機が迫る――
そこに空から降ってくるバルバトス・ルプス。
「バルバトス、なのか? これは、まるで――」
背中に見惚れるマクギリス、ってまさかのヒロイン狙い?!
火星からの本隊到着だと知るガランは傭兵を引き連れて撤退、追いかけようとする三日月だが、アストンが重体となってタカキがそのMSに向かっていることを知る。
「嫌だ……嫌だ! 俺は、お前がいてくれたから今まで地球でやってこれたのに! 火星を離れて、フウカを幸せにしてやれるか不安で、だけど! お前が隣にいてくれたから……友達になってくれたから!」
「俺は……違う。俺はお前に……フウカに、出会わなければよかった」
ヒューマンデブリとして生きていくには、自分自身の感情を殺さなければ押しつぶされる、にも関わらず鉄華団に入って、タカキやフウカと過ごすことで自分自身には感情が生まれてしまったと語るアストン。
「本当に、お前らに出会わなければよかった……死にたくないって思いながら死ななくちゃいけないんだからな。でも……ありがとう」
コクピット内でつぶされるパイロットを助けようと生身で寄るパイロット、という部分も含め、完全に意図的に昌弘の死亡シーンと重ねているのですが、昌弘は救いの存在そのものに絶望していたところを最期に昭弘に希望(死後の転生)を与えられて死ぬ、という形で、アストンは既に与えられていた救いをその負の側面まで自分で抱え込んだまま、タカキの言葉を受けずに死ぬ、と対になる構造。
アストンが「生まれ変わり」について信じているのか不明なままですが、「ヒューマンデブリはゴミなのだから生まれ変わるはずがない」とも思っているのであれば、あるかも不明な転生よりもむしろこの世に未練を残したまま死ぬ方が、アストンにとっては幸福だったのかもしれません。
とはいえ、サヴァランがビスケットに、ビスケットがオルガにといった感じで死んだ者が残す未練は、生きている者にはある意味呪いとなって降りかかることもあるというのが、本作世界の一筋縄ではいかないところでもあるのですが。
「死んだ後に何が残るのか、何を残すのか」が全体を通じるテーマの作品だけに「未練が残ると生きた者にとっては呪いとなる」というのは、かなり重たい。
三日月たちが戦場を片づけている一方で、ラディーチェはガランと連絡が取れなくなったことに焦り始めており、そこにユージンたちが乗り込んできて問い詰める。
「ち……違うんです!全部ガラン・モッサの差し金です! わ、私はただ、奴に言われたとおりにしていただけで!」
言い訳モードに入るラディーチェ、本当ダメ人間(笑)
昭弘はラフタからの連絡でアストンの死を知り、ガランは自らの手で討つと決意。ラディーチェからガランの拠点を聞き出した鉄華団は拠点にカチコミ。
ガラン隊は適当にばらけて迎え撃ち、カチコミ部隊にはハッシュを引き連れた三日月も。
「俺が先行するから、適当についてきて。無理はしなくていいから」
三日月、戦闘を完全に天性のカンと実戦経験でやっている人間なので、指示がテキトーなのが予想通り過ぎる(笑)
ハッシュは初の実戦&初の三日月との連携なのですが、ここで心中「俺だって」とつぶやくハッシュ、アストンとタカキの「いつも通り俺が前に出る」からのタカキ暴走と重ねられていて、より悪辣(^^;
そして実践がシミュレーション通りにいかないで、翻弄されるハッシュは敵の攻撃を前に死を覚悟するというヘタレっぷりを見せつけるが、三日月が前に出て助け……蹴飛ばされた(笑)
「ふー……邪魔な」
追い討ち(笑)
飛んでいくバルバトスの背中にかつて連れていかれたビルスを思い出すハッシュ。マクギリスの反応も合わせ、バルバトス(三日月)の背中=指導者、と象徴的に重ねられますが、自らの憧れと未来をそこに見るマクギリスと、導いてくれると信じていたのに自分を置いていった男を見るハッシュと、見る者が全然違っているのが両者のスタンスの違いを明確に。
今回だけで三日月を軸にマクギリスのヒロイン度とハッシュの主人公度が一度に上昇するという、面白いけどなんとも形容しがたい珍妙な展開に(笑)
鉄華団+タービンズの猛攻に次々潰される傭兵たち。一人逃げたガランには、昭弘のグシオンリベイクフルシティが迫る!
「守るべきものがある、それは結構! 仇を討つ、それも結構!」
「てめえは俺がやる! それだけだ!」
「お前は人として至極まともだ。しかしなあ!」
昭弘の怒りの連撃に、地面に叩きつけられるガラン。
「戦場では、まともな奴から死んでいくのが常。己が正義を守るため、もがく奴から淘汰されるのだぁ!」
斧を取り出し叩きこむガランだが、巨大ペンチの前に阻まれてしまう。
「良かったな。あんたはまともで」
強烈な皮肉を叩きこむ昭弘。
ガランのセリフは悪党からの一方的な理屈なのですが、昭弘は三日月と同じ死生観で生きているなら「死んだ人間の弔いは考えるが、死んだ人間は死んだ人間で分けて考える」というところに落ち着いていそうで、本当に「仇討ち」とか「正義を守る」とか考えてないと思われ、実際に「至極まとも」とは言い難いというのがポイント。
「お褒めいただき感謝するぜ、名も知らぬ小童よ! このロートルの死は、必ずお前の未来の姿となる!」
そして、自爆するガラン。爆炎に飲み込まれるグシオンを心配するラフタだが、ほぼ無傷のまま現れるグシオン。
「平気だ。俺は生きてる」
「……そうだね。あんたは生きてる……」
「戦場ではまともな奴から死ぬ」という展開の直後に、「自分が生きている」と強く主張する昭弘ですが、三日月と同様に肉食を拒絶するなど、「死」の非日常性を忌避している節が強い昭弘の場合だと「生きていることこそ正常」あるいは「生死に精神の政情や異常は無関係」という主張に見え、格好いい。
ガランの撃退を終えた鉄華団は、ラディーチェ尋問タイムに。あくまでガランに騙されたと主張するラディーチェに、地球支部と引き換えの安全と経済面の保証契約が交わされている証拠を叩きつけるユージン。
「そ、それは……全てはあの男を欺くためですよ! 駆け引きという言葉すらあなた達には理解できないの……」
「チョロチョロすんな」
スーパー言い訳タイムの継続に伴い、さらにダメ人間度が増していくラディーチェ。
取り繕おうとしてるけど「駆け引きという言葉すらあなた達には理解できない」という言い回しとか、鉄華団全体への根源的な軽蔑が滲み出ており、本当にテイワズはどうして、こいつを派遣したのだろう……(^^;
三日月が今日もフォー・ジャスティス! で解決しようとするが、タカキの進言でラディーチェの処遇がタカキに任されることに。
ラディーチェはなおも、鉄華団地球支部を守るために合理的な判断をしたこと、火星と地球は離れていて現場で判断するしかないこと、地球支部の道は地球支部で選ぶしかないんだということを力説して説得しようとするが、
「その通りですね。俺も選びます」
流されたままだったタカキはここで、自らの意志でラディーチェを射殺。
見方によっては、現場と上層部に挟まれて苦しんだ結果選ぶ道を間違えて死んだらディーチェですが、選んだ道がどう考えても狂気の沙汰以外の何物でもなく、さらに嘘と誤魔化しで塗り固めた結果死亡と、最終的にリアルに不快な人間に(^^;
「あの人と俺は全然違う。阿頼耶識の手術なんて関係ねえ……そもそものモノが違う」
そのころハッシュは、自分の経験不足から来た失態を糧に、変な方向に突き進みかけていた……ちょっと不安なのですが、三日月がアレなので対してハッシュがすごく主人公っぽくなってきていて、良い方向に転がることを期待したい。
マクギリスはガランの証拠を探すが、ガランは相当用心深いらしく、重要なデータはMSで管理されていたので回収不能。そのころガランの死を知るジュリエッタは泣き叫んでいたが、そんな彼女を諌めるラスタル。
「彼はどこにも存在しない。私の活動に裏で協力するため、彼は家も所属も、本当の名前すら捨て、戦いの中で生きそして死んだ。存在しない男の死を悲しめば、そこまで尽くしてくれた彼の思いを踏みにじることになる」
正直、ラスタルのセリフで説明させ過ぎたのはあまり良くないと思いますが、ここで敵として戦っていたガランは「何も残さない生き方を選んだ男」だと明確に示されることで「自分で選ぶ」「何かを残そう・成し遂げようとするため戦う」という鉄華団や三日月へのアンチテーゼとなることに。
戦乱を基に生きていく傭兵業で、相当な殺人も犯していると思われること、今回いたずらに混乱を引き起こしたことなどからやっていることはどう考えても悪行なガランですが、しかしその生き方自体は否定されてはいない、というのも重要なところ。
そしてガランの生き方が明確にされることで、死の際に昭弘に投げかけた言葉にも、意味が生まれることに。……まあ昭弘、特に聞いている様子はないし、ガランは人生に未練あんま無さそうなので、呪いにはなりそうにないですが(^^;
非常に極端な例ですが、世界に何かを残さなくても人として生きる道、選択肢の一つとして考えられるのではないか? という要素を盛り込んできたのは、今回一番面白かったところ。
家に帰ったタカキは、フウカにアストンのことを聞かれるが、答えずとも察するフウカ。そして自分たちの名前のない戦争は終わったという、タカキのモノローグで幕引き。
ここ数回、名前があること・名前を付けられたことをやたらに強調してくると思ったら、ここで「名前が無いということの意味」にまで踏み込んできて、ここまでの布石だったのかと気づき納得。
正直、前々回・前回とあまりに停滞していてテンション落ちていたのですが、今回はそれを取り戻すかのように色々な要素が詰め込まれてきて、面白かったです。
ところで:今回もアトラ、出番なし(^^;