新たなガンダムフレーム・フラウロスをはじめとするモビルスーツが集まる鉄華団と、その周辺事情を描きつつ、コロニー鎮圧任務へのヴィダール出陣も見せてくるという、情報を見せることに特化しつつも戦闘描写あり、というちょっと変わった回。
冒頭、ハッシュを見送る三日月に、桜が一緒に行かなくていいのかと尋ねると
「俺にはまだ、やれることないから」
「ずっとここにいたっていいんだけどねえ……」
三日月の「役割」「仕事」に対する感情は次回で片鱗が見えるのですが、色々ときっぱりしすぎている三日月の「やれること」と「やりたいこと」の擦り合わせの悪さはどんどん強調されることに。
チャドもハッシュもその他新人から古参メンバーまで、新たなモビルスーツの調整とオルガの選んだ新たな目標に向かって頑張っているところ、名瀬は弟分の扱いについてヤクザのみなさんから詰め寄られていた。
ジャスレイとアミダの会話により、度々作中で話題に上る「選択肢」について男女の差はないことも示されますが、本作あまり性別差は問題にしてこなかったので、どうもピンとこず。
面白いのはジャスレイ、「自分の女をモビルスーツに載せるようなバカじゃない」と自称していて、そこには確実に女性蔑視の意識が滲み出ていますが、本作ここまで戦争に対して積極的肯定をしていない以上「モビルスーツに乗って戦う=異常事態」なのは確実で、性別抜きにしたらそこは間違っていません(むしろ「戦う権利」を当然のものとして認識することで、間接的に戦争を肯定することにつながりかねない状況をアミダが理解できているか怪しい描写にさえ映る)。
カタギじゃないしどう考えてもダメなオッサンだけど、絶妙に共感できる要素を残してあるのが、本作らしいところ。
桜の農場は一時クーデリアの会社で預かることになり、そのことも含めて三日月と会話(久しぶりにアトラ登場)。
ハッシュについてクーデリア、「ずいぶんと懐かれましたね」って犬かっっ(笑)
三日月はすごく鬱陶しがっているのですが、三日月は戦闘員としての自分は「なりたい自分」ではないし、戦闘も「やりたいこと」ではないので、「なりたい自分」が明確に戦闘と結びついたうえで戦闘員としての三日月にすり寄って来ているハッシュは、そりゃ迷惑な存在だろうなと思えます。
そういう複雑なこと抜きに「自分をなんか誤解してべたべた寄ってくる自分より背の高い男とかキモい」でも、問題ないですが(笑)
「三日月を超える」を目標として掲げたハッシュは運命・才能の存在に縛られている感じで、せめてまずは三日月に追い付くことを、とトレーニングなどに励んでいるのですが、三日月にべったりなのはちょっと道を間違えている感じなので、どこかで変化があるでしょうか。
ヒロイン二人組は農場について含ませたような口ぶりで、困惑する三日月(「ちゃんと言葉にしないと伝わらないよ」って同監督・脚本の『心が叫びたがってるんだ。』を思い出すのですが(^^;)の下に、おやっさんから臭いがしないと慌てるチャドだが、別になんとも思っていない一同。
衝撃の事実! 雪之丞とメリビットは交際していた!!
……前半でメリビットさんの頭をなでるおやっさんが描写されていますが、メリビットさんは大人として色々ダメな人なので、「男女の付き合い」よりむしろ「親子」に見えてならんのですが(笑) おやっさんもメリビットさんとは別方向に色々欠けている人なので、この二人で付き合えば丸く収まりそうではありますけど。
で、そんなことを知らなかったチャドは昭弘から「なんで教える必要があるんだ?」と言われ、本当に自分は仲間なのかと泣きだす。
さすがにこれは、チャドが「家族を信じろ」の一辺倒でラディーチェを説得していた事実と合わせると、ギャグで流せる領域ではなくて、やりすぎ(^^;
チャドの落ち度を描くことでラディーチェにも同情できる要素を付加しているように感じられますが、ラディ―チェは選んだ道が善悪と言うより「狂っている」ので、下手に踏み込むと死体蹴りにしかならないですし。
マクギリスからの支援を受けるオルガを描いた後、コロニー制圧任務のアリアンロッドのみなさんに。
イオク様、前回の戦闘(避けた方が当たりそう)では「技術はそれなりにあるけれど、よりバケモノを相手にしてるので対抗できてない」と取れなくもなかったのですが、今回そういう相手ではなくなったために単なるポンコツであることが明確に。
もう以降は色々な意味で「様」をつけて呼ぶことが定着しそうだ……。
一方のヴィダールはモビルスーツ(名称「ヴィダール」だけどガンダムフレームっぽい)に意識があるか、そして自分がモビルスーツと一体であるかのようなセリフを見せつつ、阿頼耶識を想わせる変幻自在の軌道で華麗な戦闘。武器のギミックも多彩で、映像面で実力の説得力を補強。
「復讐とは、本来黒く汚らわしい感情のはずです。ですが、あなたの太刀筋はとても復讐を起因としているとは思えませんでした。強く、とても美しい」
ヴィダールは口では「復讐」を述べつつも、その真意は曖昧なまま。真意や過去に対する問いかけには肯定も否定もしないというのが、底の知れない感じを上手く出しています。
ヴィダールが戦闘に出ている間、おそらく「復讐」の対象であろうその男は、自宅で嫁に膝枕してあげていた。
「この本のおかげで思い留まれたんだ。アグニカは実現しようとしていた。人が生まれや育ちに関係なく等しく競い合い、望むべきものを手に入れる世界を。素晴らしいと思わないか?」
アルミリアに対して「誰に反対されることもなく愛する者を愛せる世界のことでもある」と補強することでロリコンの世界を実現したいと誤解されるような表現になっていますが、マクギリスの理想は人の自由が保障される未来を手に入れることであるとはっきり示され、そうすることで過去に自分が受けてきた屈辱への復讐としようとする意図が見えることに。
ただ、アグニカと(おそらく)違うのは、マクギリスはそれを「自分の手で」やらねばならないと思っているところで、そこが落とし穴になりそう。
……うーん、今後の展開に色々影響しそうな要素が出てきたものの、文章で書くと色々とまとまりづらく、情報量が増えてきたのがいい加減厳しくなってきました(^^; 面白いのは面白いのですけど。
次回、新たな敵出現?