『キラキラ☆プリキュアアラモード』の感想。
冒頭、ケーキを焼こうとして大爆発を起こし煤だらけになるキッチンから、しれっと一人だけ逃亡するゆかりさん(笑)
……大爆発の原因、彼女が一人だけ離れてたからの気もしますが。
開店準備に追われる中、責任者が必要だと長老がダンディな老紳士に変身。
ダッシュ1、2、3!
インドの山奥で修行して~ ダイバダッタの魂宿し~
……すみません、どこかで声優ネタを捻じ込みたかったので、ここで入れました(^^;(筆者、『レインボーマン』は未見)
皆が白けたまなざしを向ける中、一人白抜き丸の目で「だ、ダンディー……」とつぶやくひまりは、そういう趣味なのか。
長老はプリキュア達を地下室に案内し、そこにあるキラキラルポットという機械について解説。スイーツから生まれたキラキラルをこれに入れて回すことでキラキラルの雲が生まれ、プリキュアの力をもってすればあらゆるものをそこから錬成できる課金ガチャシステムなのだ!
ということで、プリキュア達がスイーツを作ってキラキラルを生み出す理由・必要性に「妖精たちが帰ってこれる目印」以外の要素が追加。
ここで一度、キラキラルとスイーツづくりとプリキュアの力の関係を整頓。
ここまでの描写を見るに、キラキラルそのものはプリキュアでないと産み出せないのではなく、人間が計算や努力、対象への想いをもってスイーツを作り上げればそこに生まれてくるものである、というのが本作世界の前提の一つとして読み取れます。
そこでプリキュアが出来るのは、「生まれたキラキラルを自在に操ること」で、これによりあらゆる物を生み出す力を持ち、これで家具類を作ることや武器に変えて戦える、というわけです。
で、これは推測になってしまうのですが、「スイーツを美しく美味しく想いを込めて作り上げれば、上質なキラキラルはたくさん生まれる」けれど、その逆に「キラキラルを山ほど埋め込んだら美味しいスイーツになる」というわけでなく、出来上がったスイーツに後からキラキラルを何も考えず盛り付けても、決してキラキラルは増えないと思われます。
何故このような推測かと言うと、「プリキュアになれば問答無用にスイーツを美味しく作れる」という話ではない(第2話でペコリンが「自分で作らないとダメ」と言っており、第4話ではシュークリームを失敗させまくっている)ことが一つ。
もう一つは公式ページにも市販品にデコレーションする形のレシピを公開している以上、既製品への飾り付けを無意味にするわけにもいかないので、後からデコレーションしても「そこに想いと努力と計算が乗るならキラキラル増加の原因にはなる」と見るのが妥当な解釈だと思われるため。
さて、そうして生まれたキラキラルを操作してなんでも作れるのは、一見掛け値なしの長所だけ乗るように見えるのですが、そうはいきません。
キラキラルで何でも作れるというのは、戦闘時のように武器に使えることもそうなのですが、下手をすると爆発など人への危害が及ぶ可能性が高いのです(というか長老はそれで肉体を失った)。
「何でも作れる」は裏返せば「間違えたら何ができるかわからない」ということでもあるわけで、さらにキラキラルは失敗作だろうと生まれるものであるとはっきりしていることからすると、第4話の超常現象勃発とか今回冒頭の爆発とか、コメント欄で指摘された通りキラキラルの暴走が原因と考えてしまうと、筋が通ることになります。
そして、一般人ならキラキラルを操作する力はないので暴走するような反応は起こさないけれど、プリキュアはそこに干渉してしまうからそんな怪現象も起きてしまう。
つまるところ、プリキュアである以上は慎重に注意を払わなければ(&団結をしないと)、単なるキラキラル操作だけでなく普通のスイーツ作りすら爆死の危険と隣り合わせということになり、プリキュアであるがゆえに日常生活により重たい制限がかかっていることになるわけです。
劇中ではオーブン爆発をギャグで流してしまっているのですが、地味にこれ、ヒーローの力に伴う制限や責任が現れている一端なのではないだろうか、と思うと色々と腑に落ちました。
……と言っても、正直言ってこの仮説が正しかったとしたら、私にとって本作のプリキュアの力ってほぼ呪いではないかって気がしてくるのですが(^^;
大いなる力には、大いなる責任が伴うものだ……。
そんなわけで思い思いに開店準備を始めるが、内装を作ろうとしてあおいが壁に穴を開け、材料を調達しようとしたひまりは買い物客のラッシュに弾き飛ばされ、各々が自信喪失。
「まだ始まったばかりだよ。力を合わせれば……」
「あら? 私、お店やりたいなんて言ったかしら?」
引っ掻き回し始める気まぐれ猫!
「その言い方は良くないな。みんな頑張ってるんだから……」
「そういうあなたは、お店やりたいの?」
「えっ?」
「みんなの意見じゃなくて、あなたの意見は?」
そして鋭く突き刺す。
この辺り、ゆかりがズルいのは「やりたいとは言ってない」けれど「やりたくないとも言ってない」わけで、自分の主張をうまくはぐらかしつつ他の面々の真意を問いただし、こっそり自発を促そうとしているのが秀逸。
ゆかりの「優秀で飲み込みが早いために物事に満足できず、満足感を得るために人間として欠ける必要がある(きつく言えば、狂う必要がある)」という設計、さじ加減を間違えると嫌な部分ばかりが目立ってしまいヒーローとしてはとんでもない地雷になる要素ですが、転換すれば「人のために自ら汚れ役を買って出ることができる」という使い方も可能と示してきました。
同じパターンで使いすぎると陳腐になるものの、坪田さんが早めにゆかりの扱いについてわかりやすい道筋をつけてくれたのは、今後を考えると良かったと思います。
……にしても、えー、そういう方向でゆかりのキャラを飲み込んでいくと、その性根の実態は……M……なの……か?(待て)
話がまとまらない中、友人の家でパーティを開くのに良いスイーツがないかと店を訪ねてきた少女えみるに、対応するいちか。友達全員が喜ぶスイーツを届けると安請け合いするいちかだが、何を作るかまでは一切考慮せず。
「間に合わせる! だって、初めてのお客さんだもん。あの子のしょんぼり顔が笑顔になったら……めっちゃうれしい!」
店を「自分たち(+妖精たち)が集まって笑顔になれる場所」と、受け身な目的が先行していた前回から、妖精やプリキュアに関係がないゲストキャラのためにスイーツを作ろうと自発的に考えるいちかを描いて、より積極的な方向に。
そのいちかの想いを受けて考える他のメンバー、ひまりはあきらと一緒に買い物に行くことで買い物下手を克服(ひまりの知識と熱意で買い物の交渉も成功)し、あおいは力を利用してゆかりの作ったオブジェを飾る作業に。
みんなが団結し、目を輝かせるいちか!
結果として、全てが計画通りに進み、微笑みを絶やさずにいる気まぐれ猫がいた……(笑)
劇中人物は誰も意識してないけれど、ゆかり一人だけ開始地点での意識と終着点での意識に何一つ変化が及んでいないわけで、偶然ありとはいえ完全に全員を手玉に取っているんですが(^^;
ゆかりはキャラデザイン的にも担当声優的にも好みだし、キャラ設計も面白いので、暴走させ過ぎないで欲しいですが、現状完全にプリキュア内のパワーバランスで最上位に位置し、裏でチームを牛耳る悪の女帝みたいな印象に(笑)
というわけで、綺麗に出来た店内の修繕後、自分たちのイメージキャラクターで楽しいケーキを作るいちかたちだが、スイーツアニマメイツ(仮)襲来でキラキラルを奪われる!
基本、アニマメイツの扱いが話の障害ではなく、戦闘ノルマ消化のためにいるだけでしかないのが現在の本作の欠点(^^; 話そのものがここまで全体としては悪くないだけに、戦闘が完全に分断されてしまっているのは早いところ解消してもらいたい部分。
戦闘はさっくり終わり、いちかたちは制服をこしらえて改めて店のオープンを始めようとするが、それぞれが塾やバンドや妹の見舞いなどの用事があるため、毎日は参加できないという現実的な問題が現れるのであった……。
第4話と同じくプリキュアチームの団結・結束がテーマということなのですが、細かく不満を言うと、団結の前の対立や挫折が第4話にせよ今回にせよ積極的に心情が食い違うものではなくて、人物が消極的になって目の前のことを諦めようとしてしまうというパターンで、両方とも解決策は「全員が一つの目的で一致する」というところに落ち着き、さらにその「一つの目的」が「ゲストキャラを笑顔にしたいから」であることまで同一であるため、どうにも根本的な部分が焼き直しみたいな印象を受けたのは惜しかったです。
ただ、繰り返される失敗が全員で共通のもの&明らかに超常現象の類で明確ではない原因、となっていたために据わりの悪かった4話と比べると、各々の失敗に対してそれぞれの足りないところを助け合って補い、一つの目的に団結するという内容に収めたことで、わかりやすく仕上がりました。……一人だけ、失敗も変化もなさ過ぎてタチ悪いですが(笑)
次回、どうも予告からお悩み相談室路線みたいになっていくようで、一抹の不安。