『轟轟戦隊ボウケンジャー』の感想。
17話
開幕から早速、妖怪を封印したという伝説を持つプレシャス、百鬼鏡を巡って争うボウケンジャーとダークシャドウ。そこにガイ、ヒョウガと名乗る怪物が襲いかかる。自らをアシュと呼ぶ彼らは、闇のヤイバをも圧倒。
鏡の所有権を主張するアシュの二人だが、錫杖の音を聞いて鏡を預けると撤退。そこに現れたのは、黒衣に錫杖の、セロリを丸かじりする男。
インパクト強烈ですが、私はこういうセロリとか青い野菜を生で食べるのが苦手なので、見ていると気持ち悪くなります(^^;
アシュに関われば死ぬという男の言葉を無視して鏡を回収した一行は、ミスターボイスからアシュについて説明を受ける。人類と異なる進化を遂げた彼らは妖怪や悪魔として伝承にのみ残る存在となっており、実在を確認したのは初めてでサージェスも調査中とのこと。一方のダークシャドウもアシュが関わっていると知るや、手を引くことに。
おそらく由来は「人類の亜種」ということなのでしょうが、そのまんまなのでガイたちが「アシュ」を自称することに何ら疑問を抱くことはないのだろうか、と変なところが引っかかります(^^; それとも人類を滅ぼした時に俺たちゃ正義になるのさとか、そういうアレ?
回収したはずの鏡はセロリにすり替わっており、黒衣の男はビルの屋上で、今度はパプリカをかじりながら鏡を囮にアシュを待っていた。
今回と次回の内容考えると、この未調理の生野菜を丸かじりする行為というのは社会性の欠如の象徴みたいに見えてくる(例:『ウォッチメン』のロールシャッハが、ダニエルの家から拝借した角砂糖を丸かじりしたり、豆の缶を調理せずそのまま食べたりする)のですが、さてどうなるか。
どうでもいいですが、こういう食事を見ていると映画『ディストラクション・ベイビーズ』の、スーパーで堂々とベーコンを丸かじり&紙パック牛乳がぶ飲みというハイレベル万引きをしていた主人公を思い出します(笑)
男はガイとヒョウガの拘束に成功するが、現れるボウケンジャー。
「百鬼鏡を返しなさい!」
ピンク、声高く所有権を主張(笑)
しかし、鏡にイエローが触れるとどういうわけか拘束が解け、放たれた二人のアシュによってイエローが転落。そして変身解除された菜月の腕輪を見たガイ。
「ぬ、これは! 選ばれた者の証! グハハハハ、ついでに最高の生贄が見つかったぜぇ!」
菜月は鏡とともに誘拐されてしまう。真墨は男もアシュだと疑いをかけるが、男は自分をアシュの監視者・高丘映士と名乗り、自分は人間であると説明。そしてアシュはかつて百鬼界に追放されたはずが、それを免れたアシュがいて、それを監視するのが役目だという。
追放を免れたアシュ二人は鏡を通じて仲間を呼び戻そうとしており、それを理解しつつも餌として使ったことを非難されるが、自分は負けるつもりはなかったので世界が滅亡したらお前らの責任だぞと、強引にボウケンジャーに転嫁(^^;
「俺にとってアシュ……特にガイを滅ぼすのは、宿命だ!」
そして特殊能力でアシュを発見し、ついてくるのは勝手だがアシュは俺の獲物だから邪魔をするなと、色々とめんどくさいツンデレっぷりを発揮(笑)
生贄というからどれほど危機かと思ったら、指先の血を少しだけで拍子抜けした菜月。彼女の無事を確認したボウケンジャーは救出とプレシャス回収を進めるが、アシュは手ごわく、そのうちに鏡の中から一体のアシュが飛び出してくる。
いかにも虎の頭と胸に虎の顔のアシュですが、それ以上に気になるのは、何故サンダル履き。
「大いなる獣レイ、お前が一番手かよぉ!」
「怒りの鬼神ガイか。よく出してくれた」
それは悪魔の伝承になった、最強にして最悪のアシュ!
さらに悪化した戦局で、次のアシュが飛び出してきそうな状況の鏡という、これまで幾度か世界規模のピンチを招いた『ボウケンジャー』でも、結構ヤバめの映像。
しかし囚われている菜月にピンクがアクセルラーを投げつけ、変身で拘束を解除したイエローが鏡を奪い、そこに錫杖を叩きこんで鏡を割る高丘。その隙を突いてデュアルクラッシャーを叩き込み、ダメージを受けるヒョウガ。
「ガイ様、レイ様……ヒョウガは、肉体を捨てます!」
「お、おい、待てって! そんなことをしたら、お前は二度と元の姿には戻れねえ!」
「こいつらは、俺が倒します!」
何故か急激にヒロイン力を発揮するヒョウガ(笑)
2体でもてこずる相手と評していたアシュに(不意打ちとは言え)デュアルクラッシャーが通用してしまったのは強引な印象でしたが、今回のゲスト怪人枠扱いなのに突如予想外の力を見せるヒョウガで、ガイ側のキャラも掘り下げられ、色々と美味しい展開に。
スーパーダイボウケンに力で勝つなどさすがに強力だがアルティメットの高速機動の前には無力で、爆散したヒョウガは暗雲のようになってなおも襲うが、高丘の力で消滅。
割れた鏡はもはや無用として、素直にボウケンジャーに明け渡す高丘。
「俺はアシュ以外に興味はない。そんなガラクタ、何の価値がある?」
「人類の宝だ! ……お前にだってあるだろう? 大切な宝が」
「……ない! 俺様は高丘映士、アシュの監視者だ! そのこと以外大切なものなど……ない」
まだアシュを狩るつもりなのか、高丘はそのまま去っていった……。
新たな敵と同時に敵にも味方にも属さない、しかしボウケンジャーの考えにも沿わないという独自の立ち位置のキャラが放り込まれる展開。宝を悪用するのではなく否定する、というのがこれまでのネガティブシンジケートと違って面白いところ。
18話
早速本部に帰ってアシュ対策を練るボウケンジャーだが、ミスターボイスが「任務はあくまでプレシャスの保護」ということを強調。一方牧野先生は出張中で情報を得られない真墨たちは、高丘のことを考える。
「あんな奴にアシュのことをまかせておいて、いいのか?」
「あれ? なんか正義の味方みたいだね」
「ん?」
「そうだよ、知らなかったの?」
「誰が正義の味方だ、誰が!」
「「ん」」(真墨を指さす蒼太と菜月)
こっそりと菜月が崩した書類の中に新スーツの設計図が入っているなどそれとなく伏線を見せていますが、チームのリーダー&サブリーダーとして暁とさくらが動く一方、蒼太・菜月・真墨のトリオ漫才が段々こなれてきた感じで、面白くなってきました(笑)
緩い空気で黄黒コンビに馴染みやすい一方、チームの立場は赤桃寄りの蒼太が上手いこと橋渡しできる存在になっているのが、良い。
「ところで、あの話のことだが……」
「あの話?」
「どうだいレッドくん、ボウケンレッドをやめる決心はついたかな?」
まさかの退職勧告?!
……んー、……えーと……ダメだ! クビになる心当たりが多すぎる!!(笑) 波衛門人形の件とか、水の都とか!
既に断ったと突っぱねる暁は、さくらの心配に気づかず。
そのころ、どこかの地下で、久々の再登場を果たした大神官ガジャがパラレルエンジンを参考にした独自開発のゴードムエンジン実験に失敗していた。
失敗しているとは言え、理解できないはずだった人間の科学の叡智を独自に解読し、原本入手できてないはずなのに設計図を丸暗記するという能力を見せ、あまつさえ実現に移してしまうという大神官ガジャの社会適応性の高さがすごい(笑) この人、人類を見下しさえしなければ現代世界でもなんだかんだ生きていけそうなのですが。
というか設計図丸暗記ってこれ、暁が16話で見せた特殊能力なのですが、ガジャは太古の時代トレジャーハンターだったりしたのでしょうか。
ボウケンジャー撃破のため、兵の弓を保管されている神社から盗み出すガイは、レイの案でいきなり倒すのではなくじっくりいたぶってヒョウガの敵討ちをする方針に。まずは弓で街を破壊してボウケンジャーを誘き寄せ、レイが撒いた霧に暁を囲い込む。
一人で探索をする暁が会ったのは、ボウケンジャーになる前のトレジャーハンター仲間、征木だった。
「お前にボウケンジャーだの、プレシャスを守るだの、そんな資格があるのか!」
征木はキョウコを置き去りにして殺した、自分が宝を得て楽しむことしか考えていないと暁に怒りを燃やし糾弾、兵の弓で暁を攻撃する。
実際、暁の暴走が原因で呼んだ危機のためクビになりかけていると思われる(状況証拠)ので、反論できません(^^;
大ダメージを受けて基地に運ばれた暁は、肋骨にひびが入るほどの重傷と、相変わらずダメージ描写の多いレッドです。
指揮権をさくらに渡し、困惑するさくらに「資格が、ない」とだけつぶやいて出てきた暁は、改めて征木と対話。
プレシャスを保護するというサージェスの理念(建前)に、征木を失ったことで気づいたプレシャスの危険性から悲劇を回避するため賛同し、これを己の使命として戦ってきたことを告げるが、征木は突っぱねる。
「いい加減にしろ。俺たちの為? 使命だと? 何を自分勝手な事を言っている! 誰がそんな事を頼んだ! そんな事で俺たちが救われるとでも思っているのか?」
命を懸ける価値もない それほど汚れた日本の~
今回グイグイ突っ込んできますが、「頼まれたことに応じる」というのが「仕事」の考え方の一つであり、同時に『月光仮面』等から連なる日本の「ヒーロー」の考え方の一つでもあるわけで、公の組織に属しかつ正義のための戦いが直接の目的ではないということが特色のボウケンジャーに対して「ヒーロー」の在り様を問う台詞。
征木の攻撃を高丘に助けられたことで回避した暁は、高丘の身の上話を聞かされる。高丘家の宿命としてのアシュの監視に加え、父をガイに殺されたことでガイを滅ぼすことに固執している高丘に、自分が掲げている使命を否定される暁。
「どうせ好きでやってるだけだろ? 嫌ならとっととやめちまったらどうだ」
「好きで、やってる……?」
そして改めて、征木に向かう暁。
「なあ征木……俺は冒険が好きだ。やっと気づいたよ。お前たちのためとか……世界の平和や安全とか……そんなのは理屈だ。俺は冒険が好きなんだ。お前だってそうだろ、征木? キョウコだって、愛したのは宝を探す冒険のワクワクだった。誰に与えられた使命でもない。だから……だからこそ絶対に逃げるわけにはいかない!」
改めて、冒険を求める心とは何かを叩きつける暁。
正義としてプレシャスを求める理由が一応建前として用意されていたもののあまりに建前すぎてサージェス自体の胡散臭さもあり信用し辛かったのですが、改めてアレは建前だし、今作の場合それでいいのだなと(笑)
強いのは「冒険はしたいが、優先すると正義のヒーローになれない(もしくはその逆)」のではなく「正義の活動はそれとして冒険は止められない」なところ。
暁の答えに征木が満足げな笑みを浮かべると霧が晴れ、征木はガイの姿に。今までの征木はレイが見せた暁の心の中の幻と判明。
……ってことは、高丘にはずーっとガイが見えていたのか(^^;
さらにプレシャスの在る場所なら暁が向かわないはずがないと今までの情報からアタリをつけていたメンバーが参戦し、肋骨にひびが入っているのに変身して活躍するレッドは、レイの攻撃を受けても倒れない。
「お前の術も俺には通じなかった。人は自分の限界など超えて、未知の世界に挑む事ができる。それが冒険の力だ!」
痛いのも苦しいのも全部受け止めて、私はプリンセス冒険者になる!
『ボウケンジャー』の核である「冒険の心」を改めて突き詰めた上で、それを軸に勢いでジャンプと、非常に熱い展開。
レイにデュアルクラッシャーを放つが、石化耐性ありで通用せず、しかし兵の弓が使われるとあっさり二人まとめて倒され、二人そろってあっさり肉体を捨てるがアルティメットに勝てるはずもなくと、この辺は勢い任せが過ぎた感ありますが(^^;
「よし、プレシャス回収!」
というわけで兵の弓を回収する暁に対し、さくらの背中を強引に押す三人(笑)
「あの……チーフ。ボウケンジャーを……やめませんよね?」
さすがに思うところあったのか、少し神妙な顔になりつつもさくらの肩を叩き、
「当たり前だ! 俺は、ボウケンレッドだ」
と笑顔を見せる暁に、さくらのことを話そうとする菜月でさくらが慌て、冒険心ドーピングが切れた暁はさくらに突き飛ばされ倒れ込む、で一件落着。
サージェスとしては一刻も早く処分したくてたまらなさそうですが(^^;
だが倒されたアシュの二人は精神体らしき姿で大神官ガジャに拾われ、そしてゴードムエンジンを埋め込まれて再生を果たす……で続く。
テーマを再確認しつつ、ヒーローとしてステップアップする場面が熱い回なのですが、途中の漫才的掛け合いも含めて改めてチームメンバーの造形の楽しさに気づかされる、高丘もそれとなく掘り下げる、ついでにガジャが復活と、全方位に見どころがあって面白い回でした。