『キラキラ☆プリキュアアラモード』の感想。
クラスメイトのオススメを受けて、スイーツ番組アシスタントのオーディションを受けることになったひまり。
場面が立花先生の研究所に移って、どうやら度々研究所に顔を出して手伝いをしている模様なのですが、塾とかキラパティとか色々含めて時間管理大丈夫なのでしょうか(^^;
欠点を含めても全体として面白いと感じている本作なのですが、こういう細かいところに眼をやると雑なのは気になるところで、とりわけメンバー個人の私生活に微妙に踏み込み切れていないのは惜しく感じます。
ところで、立花先生の研究所、あまりに突飛なデザインで近隣住民から何か言われたりしていないでしょうか(笑) 楳図かずおの家か!
着実に増えていくひまりのスイーツノートに感心しつつ、オーディションの話を聞く先生。
「私、先生のようにスイーツの素晴らしさをたくさんの人に伝えたいんです。そのためにも、臆病な自分を変えなきゃと思って……」
「そうじゃな……ま、何でも挑戦するのは良い事じゃ。ひまり君らしく、な」
「私……らしくですか?」
「うむ、そのノートのように」
そして迎えた当日、テレビ局。キラパティメンバーの応援を受けながらも、煌びやかな他の参加者を見て緊張するひまり。
ゆかり&あきらが芸能事務所にスカウトされるのは定番ネタとして、普通に著名人のシエルが追いかけられるのは、面白かったです(笑)
いざオーディションが開幕し、他の参加者が曲芸のようなアピールをする一方、ひまりは「ホイップの真似をしながら自己紹介」という命題で、
「あの……このホイップは何に使うものでしょうか?」
面倒くさい性分を発揮し始めた!
詰め寄ってくるひまりの剣幕に焦る番組プロデューサーは、「その話、いるのかな?」と口にするが、それこそまさにひまりにとってはトラウマのクリティカルヒット。
自分は結局何も変わっていなかった、と落ち込むひまりを励ますいちかたち。
「変わりたいと思うのは、悪い事じゃない。でも……」
「ひまりらしさまで失くす必要無いんじゃない?」
「私、らしさ……」
「ウィ! らしさって、とっても大事」
「だからさ、いいじゃん、そのままで」
仲間内で凄い勢いで褒め殺しているような絵面に(^^;
「でも嫌なんです! ……失敗ばかりの私らしさなんて…………どうしても、好きになれません」
逃げるように走りながら荷物を取りに行くひまりだが、テレビ局の中を闇が漂い、荒れる人々達。そしてひまりの前に現れるエリシオ。
「これがあなたの心を照らしているのですね。ならば……」
いつの間にかスイーツノートを手にしており、ひまりの目の前で燃やしてしまう。
前回のやり口(精神に攻撃するために肉体の機能を封じる)はあまりに直接的過ぎてスマートじゃないと思ったのですが、エリシオが精神に攻撃するための直接攻撃手段としてギリギリの範囲はやっぱりここまでだよな、と改めて感じます。当人の積み重ねの否定、という面としても明らかにこちらの方がエグい。
「……こんなものがあるから争わねばならないのです」
眉をひそめていかにも「嫌悪」といった表情ですが、エリシオのオリジンに何か関わるところがあるのでしょうか。背景事情抜きの完全狂信者でもいいと思うのですが、どうなるのか。
そして、コートにハンチング帽にメタモルフォーズ(やけに似合う)したエリシオは、ひまりの過去を上映。
自分が得た知識を人に示したかったこと、それが受け入れられなかったこと、他の同級生の話についていけなかったこと、そこからスイーツの研究にのめりこみ、さらに一人の世界に……。
「そう。オドオドし、小さなリスのようなあなたには、闇の方がお似合いです」
闇に誘うエリシオに向け、立ち上がって歩き出すひまりだが、ノートの燃え残りにはわずかにレシピの文字が残っていた。
そこにあるのは、かつてのように人から逃げ、一人で閉じこもって書いてきたものではなく……
「キラパティみんなで作ったスイーツの数々……いっぱい……いっぱい……レシピがある。私はたくさんのスイーツで、たくさんの人に出会ってきた。私は……一人じゃない!」
その時、ひまりは自力で光を取り戻し、試写室の闇を振り払ってキュアカスタードに変身。戦うしかないと踏んだエリシオは、踏み込んできた他のプリキュアとカスタードをそれぞれフィルムで拘束。
指で四角を作って構図を考えるエリシオ、変態的な意味ですごく様に(笑)
「そのままのあなたじゃ、またいつまわりから人がいなくなるかわからない。どうせまた失敗ばかり」
「はい。きっとまた失敗すると思います」
「?!」
「でも、私だから仕方無いんです」
なんか変な方向に自己肯定力が働き始めた?!
「私は自分を変えられなかった。でも、全部変える必要なんてなかった。私は、私のままで……それでもスイーツがあれば、これからも、新しい出会いが待ってる!」
キュアカスタードからあふれ出たキラキラルはなんと、試写室の投影機を動かし、映し出される未来のイメージ映像。
「スイーツが大好きな気持ちと、ほんの少しの勇気があれば……私はきっと、前に進んでいけます!」
拘束を打ち破り、エリシオを撃退するプリキュア達。みんなが元に戻って安堵するカスタードだが、変身解除していなかったためにリスの仮装をしていた別参加者と間違えられ、同じオーディションを行う羽目に。
同じくプロデューサーを焦らせることになるが、
「私はスイーツが大好きなんです! 中途半端な真似なんてできません!」
自己肯定力、怖い。
帰りのバス、結局ノートは復元せず(こういうところが妙にシビアなのが本作)だが、今までのレシピは自分の中にあるし、これからのレシピが楽しみと言うひまり。
「ひまりんってば、本当スイーツが好きなんだね」
「はい。スイーツと、その……」
「?」
「その……スイーツと……スイーツが好きな今の私が、大好きです!」
本作のテーマ的な筋を通す形で締め。
ひまりが他人の存在から自分を見つめ直す→失敗も含めて自分のことを肯定できるようになる→そこから未来が見通せるようになる、という筋書きなのは29話と同じく本作の根幹部分なのでしょうが、「私だから仕方がない」など、失敗を無視して前のめりみたいな印象に映ってしまったのは気になる部分(^^;
失敗を含めての現在であり未来である、というのは納得なのですが、話としてその失敗がどう作用したか、どう乗り越えたのかという部分を触れないまま、最終的にオーディションでは同じ調子を「私はこれでいい」でゴリ押すような話に見えてしまいました。
今回明確に不可逆的なもの(燃えてしまったノート)も描写されているわけで、「失敗」を「それでいい」でただ通すのはバランスが悪く感じます。それをどう受け止めるのかというのも、序盤から通じている本作のテーマの一つだと思うわけで。
ノワール側が「命を奪う」ことを持ちだしてきたりしたので、最終盤、「失敗して取り返しがつかないもの」に踏み込む気配はありそうですが。
「自己の肯定」「他者の存在の肯定」「人と接する意味」と数々のテーマ部分が29話でだいたい固まってしまっているので、あれを超えるぐらいの勢いがないと物足りなく感じてしまうのも、困ったところ。
次回、別世界で愛を叫ぶ。